東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)99号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について検討する。
1 成立に争いのない甲第二ないし第四号証によれば、本願第一発明は、従来技術による既知の装置では、ミシンのステツチに関連した情報は、ミシンの駆動と同期して読出ヘツドを通過する記録紙又はテープ上に蓄えられるが、多くの異なつた模様(情報)を蓄えるには大きなスペースを要すること、及び機械的に動く記憶装置の起動及び停止に伴う慣性の問題が原因で成功しなかつたとの知見に基づき、従来の機械的に動く記憶装置に代えて静的記憶装置を使用することにより、高密度の情報記憶が達成でき、予め決められたステツチ模様をミシンに発生する装置を提供することを技術課題とし(訂正明細書第四頁第一六行ないし第五頁第七行)、これを解決するために、機械部分としての構成A及びB、電子制御部分としての構成CないしFより成る技術的手段を採択したミシンとしたものであつて、その具体的な構成及び機能を明細書の発明の詳細な説明に記載された最適実施例及び別紙図面(一)に基づき検討すると、次のとおりであることが認められる。
(一) まず、機械部分についてみると、Fig1に図示されたミシン針17を保持する針棒18は、公知の機構により上軸14の動きに応じて上下に往復運動するとともに、Fig4Bに示されるような模様を形成するために、駆動リンク30により揺動枠19を介して横方向(ミシンに向かつて、前後の方向)に運動せしめられる。
駆動装置であるアクチユエータ36は、その動きに重みをつけられた五つのソレノイド40ないし44を含み、後記静的固定記憶装置92からの出力データによりこれらのソレノイドが選択励磁されると、それらの動きに応じて(各ソレノイド接極子の動く距離はそれぞれ異なるようにされていて、励磁されたソレノイドの合計移動距離に応じて、ミシン針17の横方向の移動量が選定されるものと認められる。)、遊動棒リンク39、振り子ドライバ35を介して駆動リンク30をして、針棒18を揺動せしめる。
(二) 次に、電子制御部分についてみると、その動きに重みをつけられた各ソレノイドを選択励磁するのが、本願第一発明の構成CないしFに規定された制御装置であつて、ミシン針17に上下の往復運動を与える上軸14に、タイミングパルス発生器90が結合されていて、上軸14の各回転ごとに、任意所望の角度、したがつてミシン針17の上下運動の任意の位置でパルスを発生するようにされている。
このパルスは、二進計数器91により計数され、右計数器は累進所定コードで出力信号を発生する(構成Dからみて、パルスを一つずつ順に計数し、各計数値を二進数あるいは二進符号で「00001」、「00010」、「00011」……「11111」のように、五本の出力線107ないし111に出力するものと認められる。)。
集積論理回路記憶装置92には、Fig4Bに示されるような模様に対応する二進符号で表されたデータがアドレス順に記憶されており、右データは計数器91の右出力信号がアドレス信号として入力することにより、順次取出され(読出され)ると、重みをつけられた各出力線は論理1又は0の状態をとる(なお、これに対応する実際の電圧の大きさは、+5ボルト又はアース電位である。)。
各ソレノイドの選択励磁は、前記記憶装置92の出力信号によりその導通が制御されるトランジスタ(Fig3には、ソレノイド44への通電を制御するトランジスタ125のみが示されているが、ソレノイド40ないし43についても同様に各ソレノイドへの通電を制御するトランジスタが設けられているものと認められる。)により行われる。例えば、Fig4Aの縫い番号1に対応するデータが読み出されて各出力線が論理0、1、1、1、1、の状態になると、最大位の出力線122が接続されているトランジスタ125以外の四つのトランジスタは、各ベースに論理1に対応する+5ボルトの電圧が印加されることにより導通して「トランジスタ125は論理0に対応するアース電位がそのベースに印加されるので、導通しない。)、ソレノイド40ないし43を励磁し、遊動棒リンク39、振り子ドライバ35、駆動リンク30、揺動枠19を介して針棒18(ミシン針17)を十進数の15だけ最初のステツチ位置(座標「0」)に向つて横方向に動かす。以下、縫い番号2以降のデータが順次読み出されてFig4Bに示すような模様が縫われる。
2 これに対し、成立に争いのない甲第五号証によれば、第一引用例記載の装置は、刺しゆう縫ミシンに関するものであつて、特許請求の範囲に記載された「ミシンの平面的布送りを、X、Y両軸移動系を担持する二個のパルスモーター9・10を介して行う機構を備え、予め前記二個のパルスモーター9・10を制御するためのプログラムを記録した磁気シート読取機8と同期連動的に作動される」電子自動制御装置を備えたものであるが、その具体的な構成及び機能を明細書に記載された実施例及び別紙図面(二)に基づき検討すると、次のとおりであることが認められる。
(一) まず、機械部分についてみると、第1図に図示されているとおり、テーブル1上に支承されたパンタグラフ4に連結された刺しゆう枠支持フレーム5は、X軸パルスモーター9、Y軸パルスモーター10によりそれぞれ作動させられる横動子11・12に適宜に係合しており、各パルスモーター9・10を磁気シートに記録されたプログラムに従う制御信号により作動することによつて布送りの平面運動を行うものであつて、磁気シートに記録されたデータ(原信号S)は、ミシン本体6と同期連動的に同一の動力源7(第2図参照)によつて作動された磁気シート読取機8の読取り磁気ヘツドにより読取られる。
(二) 次に、電子制御部分についてみると、第3図及び第4図に図示されているとおり、前記原信号Sは、二進符号の形でミシンの一針ごとに布送り平面運動のX軸成分、Y軸成分の各々の正負の方向及び移動距離(パルスモーターのステツプ数)を符号化し、磁気シートの連続的に一条の磁気記録トラツクにパルス状に記録されており、一個の読取り磁気ヘツドが磁気シートに対して相対的に走査して磁気トラツクに沿つてこれを読取ると同時に、この読取り磁気ヘツドの磁気シートに対する相対的運動の作動機構の径路に、例えば、適当個の孔を有する円板を設け、源光及びフオトダイオードを用いて光電的に、原信号Sと同期して周期的に繰返す二種の信号C(原信号Sと同位相で、原信号が全部存在する場合の個数とも対応するクロツクパルス)及び信号T(信号Cの一〇個ごとに一個の割合で周期的に繰返すように設定したタイミングパルス)を作る。このタイミングパルスTはミシンの一針ごとの布送り分に相当する原信号(シグナルパルス)Sの記録読出しの始点と同調するように設定されている。
読出された原信号Sは、一針分ごと(クロツクパルスCの一〇個分ごと)にクロツクパルスCを遅延装置27により適当時間td1だけ遅延させたシフトパルスS1によりシフトされて、シフトレジスター13に時間的に直列に書込まれ、次いでシフトパルスS1の一〇個の入力ごとに出力する補助カウンター14の出力を遅延装置28により適当時間td2だけ遅延させたゲート信号により並列的に取出され、第4図に図示された順序に従い、ゲート群19・20を通り、X軸カウンター15、Y軸カウンター16、遅延装置29、30、パルス発信器21・22、正逆転切替用メモリ17・18・パルス分配器23・24等の電子回路により原信号Sに見合うパルスモーター9・10を駆動するための制御信号(回転方向及びステツプ数)に変換され、右制御信号が駆動装置であるパルスモーター9・10に印加される。
3 審決は、本願第一発明と第一引用例記載のミシンとを対比し、両者は、「前記記憶装置から取出されたデータに対応する模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置」を備えた点において一致していると認定し、原告は、審決の取消事由(事実欄第二、四)1、(三)においてこの認定が誤りであると主張しているので、この点について検討する。
ところで、特許出願に係る発明が当業者において特許法第二九条第一項所定の発明(以下「公知発明」という。)に基づいて発明をすることができたかという進歩性の判断においては、発明の目的、構成、作用効果の面から総合的に認定、判断すべきであり、通常、特許出願に係る発明と公知発明との間に存する一致点及び相違点をそれぞれ確定した上、該相違点の構成の困難性の有無を構成自体の対比のみならず、発明の目的、作用効果の異同をもしんしやくして検討すべきものとされている。その場合、特許出願に係る発明の構成の認定は、もとより明細書の特許請求の範囲の記載が基本にならなければならないが、特許請求の範囲の記載の限度を越えない限り、技術常識あるいは周知技術に基づき当該記載の技術的意義を理解したり、また、明細書の発明の詳細な説明又は図面の記載によつて明らかにすることができる発明の目的、作用効果との関連において当該発明の採用した技術的手段を認定することは許容されるところである。また、公知発明との間の一致点及び相違点を認定するについても、単純に両者の構成を対比するのみならず当該構成の機能ないし作用の異同を明らかにすることが、判断の仕方として是認されなければならないし、また、事案によりそのような仕方で判断することを至当とすることがある。
以上の観点から本件をみるに、審決の認定した前記装置は、本願第一発明においては、構成Fに規定する構成要件のうちの「前記記憶装置からとり出された前記データに対応するステツチ模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置」に相当するものであるところ、右にいう「有効に印加する装置」の技術的意義は、その表現自体から必ずしも明確であるとはいえないが、前掲甲第二ないし第四号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、実施例として、「記憶装置92には、アドレス入力ライン113・114・115・116および117と出力データライン118・119・120・121および122とを有する固定記憶装置(ROM)であり、ここではシグネチツクス社八二二三の固定記憶装置112が供給されている。記憶装置112は、図示のように、論理電源の高い電圧側105とアース側106への普通の接続を有する。記憶装置112は、アドレスライン113―117に表われるどのような二進数に対しても、そのアドレスで指定された記憶場所にある予め決めた特定の二進数が出力データとして出力データライン118―122上に生じさせるように、永久的にコード化されている。第4A図のコード化データ表は、図示したやじり模様を作るためにはどのように記憶装置112をコード化させるかを示している。パルス発生器90からの連続パルスは、順々に数え上げられるので、出力データライン118―122は、表のコード列に示したデータに従つて、論理1または0の状態をとる。実際には論理1は+5ボルトに相当し、論理0はアースに相当する。」(訂正明細書第一四頁第一二行ないし第一五頁第一二行、昭和五八年三月四日付手続補正書第二頁第一七行ないし第一九行)、「各々の出力データラインは、第1図に示したソレノイド40~44のそれぞれの一つの駆動を制御するために接続している。便宜上このような接続をなし遂げるのに必要な要素は、第2図でソレノイド駆動装置と名付けられた共通組立品123の中に収容される。典型的なソレノイド駆動装置が第3図に示してあるが、トランジスタ125は出力データライン122に接続されるベース126を有する。エミツタ127はアース106に接続しており、コレクタ128は、ソレノイドを励磁するのに必要な電流を供給することが可能な電源のプラスの端子130にソレノイド44を通つて接続している。ベース126はまた論理電源の高い電圧側105に抵抗131を通して接続している。操作者に動かされるスイツチ132は電気機械アクチユエータを不作動にするために論理電源の高い電圧側105に含まれ、不作動の場合にソレノイド40~44の各々を作動させないことに等しい条件が得られ一線のまつ直ぐなステツチが生じる。典型的なソレノイド駆動の動作は次の通りである。論理1(論理電源電圧)がライン122に現われると、トランジスター125が導通してソレノイド44を励磁するために電源130から電流を供給する。一方、ライン122が論理0(アース電位)の時は、トランジスター125がカツトオフされソレノイド44への通電が停止される。さて、もしもライン122に最上位出力ビツト1、すなわち、重み(16)×1が現われて、ソレノイド44が最大出力運動量を起こすように選ばれるならば、即ち、その運動量がこのビツトの重み(16)に比例するならば、記憶装置92内でコード化された出力二進データのうち、この特定のビツトにもとづいてステツチ座標を制御する出力装置が該ビツトに対応した運動量を生じるように変換することが直接なし遂げられる。以下、同様にして、他の出力データライン118・119・120および121の各々がそれ自身の駆動トランジスタを通してソレノイド40・41・42および43にそれぞれ接続されて、各々のソレノイドは、接続される相手の出力データラインのビツト重みと同等のビツト重みをもつてアクチユエータの運動量を制御し、それらが加算されてステツチ形成装置の運動量が決定される」(訂正明細書第一五頁第一三行ないし第一六頁第一六行、昭和五八年三月四日付手続補正書第三頁第三行ないし第四頁第三行)と記載されていること、及び別紙図面(一)Fig2、Fig3からみて、本願第一発明においては、前記集積論理回路記憶装置92から取出された五ビツトから成る二進符号で表されるデータに対応する出力信号は、各ビツトごとに各出力線118~122を経て駆動装置を構成するソレノイド40~44への通電を制御する駆動トランジスタのベースへ直接印加されるようにされていて、出力線が論理1をとる場合には、トランジスタが導通することにより、ソレノイドに通電してこれを励磁し、逆に論理0をとる場合には、トランジスタが導通せず、ソレノイドは励磁されないものであり、これにより各ソレノイドは、右データに対応する出力信号に応じて選択的に励磁され、右出力信号の各ビツトに対応し、かつ、ビツトの重みに比例した運動量を生じ、これらが加算されて、ミシン針17を含むステツチ形成装置のための運動量を生じるものと認められ、本願明細書には、前記記載のほかにステツチ模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置に関連する機能をこれと異なつたものと解すべき記載は存在しない。
本願第一発明における電子制御部分の全体はさきに1、(二)において概観したとおりであるが、その電子制御機構のうちにおける「前記記憶装置からとり出された前記データに対応するステツチ模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置」の意義を右認定事実に基づいて具体的に規定すれば、右装置は、駆動装置に含まれる各ソレノイドへの通電を制御するための各駆動トランジスタ及びこれに付属する抵抗(例えば、トランジスタ125に付属するものは抵抗131)から成る技術的手段というべきである。そして、各トランジスタのベースには記憶装置から取出された二進符号のデータに対応する出力信号(すなわち、ステツチ模様信号)が信号の形態としては、何らの変換を伴うことなくそのままの形(例えば、「10010」のような形」で印加され(但し、電圧の大きさとしては、+5ボルト又はアース電位が印加される。)、右の各トランジスタの導通状態を制御し、もつて各ソレノイドを選択的に励磁するが、該出力信号は、各トランジスタを経ることにより別の信号形態に変換されるわけではない(すなわち、例えば、全体として各トランジスタのベースに印加される信号が二進符号の「10010」であれば、各トランジスタにより全体として二進符号の「10010」の信号が出力され、したがつて、信号状態には変化がない。)から、結局、右装置は記憶装置から取出されたデータに対応する出力信号(すなわち、ステツチ模様信号)をその信号形態としては何らの変換を伴うことなく各ソレノイドに与えられる装置を意味するというべきである。
他方において、第一引用例記載のミシンにおいては、前記2認定のとおり、磁気シートから読出された原信号Sは、シフトレジスター13、補助カウンター14、X軸カウンター15、Y軸カウンター16、遅延装置27~30、パルス発振器21・22、正逆転切替用メモリ17・18、パルス分配器23・24等より成る電子回路を経ることによつて駆動装置であるパルスモーターの制御に適する信号に変換されてから、駆動装置であるパルスモーターに印加されるものであつて、この電子回路は、前記認定の本願第一発明における模様信号を駆動装置に有効に印加する装置とは、その技術的内容ないし構成、機能を明らかに異にするから、これをもつて本願第一発明における「前記記憶装置からとり出された前記データに対応するステツチ模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置」と同一視することはできない。
のみならず、前掲甲第二ないし第四号証によれば、本願明細書には、本願第一発明が構成Fに規定する装置を採用したことについての直接の効果は明記されていないが、一般的にみて、記憶装置から読出されたコード化されたデータに対応する出力信号は、駆動装置の制御に適する信号に変換されるものであることからすれば、本願明細書の記載事項としてさきに認定したとおり、本願第一発明の構成Fに規定する装置のように、記憶装置から読出されたデータに対応する出力信号を信号変換することなく、そのまま駆動装置の制御信号とすることは、少なくとも、記憶装置から駆動装置に至る回路の構成を簡単にし得るものと認められ、この点において、第一引用例記載のミシンが前記認定の電子回路を有し、これにより磁気シートから読出された原信号(模様信号に対応する信号)をパルスモーターを駆動するための制御信号に変換するものであることに比して、格別の作用効果を奏するものというべきである。
被告は、本願第一発明の構成Fは、どのような電子回路を含むかについては、「有効に印加する装置」というだけで何も特定していないから、要するに「有効に印加する装置」が記憶装置に連接して配設されていることを規定しているだけのものであり、これに対し、第一引用例記載のミシンにおける制御装置は、前記認定の電子回路を通じて記載装置から取出された原信号を制御信号に変換して駆動装置(パルスモーター9・10)に印加しており、この電子回路は本願第一発明の前記装置と一致している旨主張する。
しかしながら、本願第一発明の構成Fに規定する「前記記憶装置からとり出された前記データに対応するステツチ模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置」は、本願明細書の記載及び特許願書添付の別紙図面(一)からみて前記認定のとおりの具体的構成及び機能を有するものであつて、これを特許請求の範囲に構成Fとして規定したものと認めるのが相当であること前述のとおりであるのに対し、第一引用例記載のミシンにおける前記認定の電子回路は、これと具体的構成及び機能並びに効果を異にするものであるから、被告の右主張は採用することができない。
また、被告は、原告は本願第一発明の「有効に印加する装置」は静的記憶装置に直結されているよう規定されているから、第一引用例記載のミシンとは相違する旨主張するが、審決は、記憶装置との関連については、模様信号の出力源が相違するものとして、相違点<2>において判断しているから、原告の主張は当たらない旨主張する。
しかしながら、審決は、本願第一発明と第一引用例記載のミシンとは、前記記憶装置から取出されたデータに対応する模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置である点において一致すると認定したものであるところ、右装置は本願第一発明の構成Fに規定する装置に関するものであつて、両者は、右装置において同一といえないことは前記認定のとおりであり、これに対し、審決が摘示した相違点<2>は、電子制御装置の模様信号の出力源が本願第一発明では、構成Dに規定する計数器と構成Eに規定する静的記憶装置であるのに対し、第一引用例記載のミシンでは、磁気シート、磁気ヘツドと磁気シート読取機である点であつて、前記認定の技術事項とは異なることは明らかであるから、被告の前記主張は理由がない。
4 以上の理由により、本願第一発明と第一引用例記載のミシンとは、「前記記憶装置から取出されたデータに対応する模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置」を備えたものである点で一致するとした審決の認定は誤りであり、審決は、この誤つた認定を前提として、「本願第一発明は前記引用公報に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたもの」と判断したものであるから、原告の主張するその余の取消事由について判断するまでもなく、違法として取り消されるべきである。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当としてこれを認容することとする。
〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。
1 連続するステツチとステツチとの間で予め定められた範囲の二つを越える位置にわたつて個々の座標位置を変えてステツチ位置の模様を生じるステツチ形成装置を有するミシンにおいて、ステツチ模様信号に応答して前記予め定められた範囲の位置にわたつて前記ステツチ形成装置に運動を伝えるように前記ステツチ形成装置に動作的に接続された駆動装置と、前記ミシンとタイミングをとつた関係で駆動されステツチとステツチとの間で有効なタイミングパルスを発生するパルス発生器と、前記パルス発生器からの前記タイミングパルスに応答して累進所定コードで出力信号を発生する計数器と、前記予め定められた範囲の位置内で前記ステツチ形成装置のどの個々の座標位置にも影響を与えることができ、かつ前記出力信号の印加に応答してとり出すことのできるデータを記憶する静的記憶装置と、前記累進所定コードの前記出力信号に応答して前記記憶装置からとり出された前記データに対応するステツチ模様信号を前記駆動装置に有効に印加する装置とを包含する前記のミシン(以下「本願第一発明」という。)